Trailer

























Introduction

ミャンマーはバングラデッシュ、インド、中国、ラオス、タイの5カ国に囲まれた多民族国家。
主要な民族は8つあり、少数民族も入れると135部族にもなり、そのうちビルマ族が70%を占める。
そして、マンダレイはミャンマー第二の都市。
1885年、イギリスに併合されるまで最後の王朝、コンバウン王朝があった。
仏教文化と信仰の中心で700を超えるパゴダ(仏塔)があり、そのほとんどはミンドン王時代に造られたものである。
また、民族音楽が体系化され始めたのもこの時代あたりからである。
ロンジーという民族服を着て、顔にはタナカという日焼け止めをぬる。
初めてタナカを見た時はなんだろうと思った。

サインワインは大きな木枠の中に21個の音階あるタイコがぶらさがる、この地方特有の楽器である。
サインワインオーケストラの中心となり演奏において、コンダクター的存在となる。
第1作ではヤンゴンにおいて地元のヤンゴン芸術大学の先生達を中心に正統派の伝統音楽を録音した。
11グループで100曲レコーディングしたが、今回はマンダレーに住む一家の女の子が中心のサインワイン楽団の録音をした。
彼等は年間200日程、あちこちから呼ばれて旅をし寄進祭、お祭りなどで演奏をする旅まわりの一座、旅芸人である。
サインワインオーケストラの中にエレクトリックベース、キーボード、ドラムなどを取り入れて伝統音楽とポップス、ロックなど幅広く演奏する。
イギリスに植民地化された1885年頃よりピアノ、マンドリン、バイオリンなど西洋楽器などを自分たち風にうまく取り入れてサインワイン楽団の中で演奏してきた経緯がある。
ミャンマーの人達はパゴダの仏像の頭のまわりでピカピカ光るLEDを装飾するなど(これも初めて見た時はなんだろうと思った。)
何事にも余りこだわらずに取り入れていくようだ。
それがこの国の独自性を生んでいるのかもしれない。








Story

MANDALAY STAR

ヤンゴンの裏道から聴こえてきた読経が
頭になぜかこびりついている。

マンダレーの犬はやさしい顔をしている。
昼間はゴロゴロと道で眠っているのだが、
夜になるとどこか闇に向かって吠えている。
それを僕は宿のベッドの上で聞いている。
きっと何か訴えているのだ。

4月、昼間のマンダレーは38度になる。
その中、表通りを一歩入ったところにある裏道を歩く。
壊れかけた家、竹でできた家、道端で女が髪を洗っいる。
密集して家が立ち並ぶ生活圏である。
日本人ときくと、私の家で食事をしていきなさいとあちこちで誘われた。
握手を求めてくるものもいた。
夕方は慌ただしい。
道端でおおきな鍋で湯を沸かし、野菜を切ったり、食事の準備をしている。
それも隣同士みんなで楽しそうにだ。
4時30分頃からたくさん並んだ屋台も忙しく動きだし湯気があがる。

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Story

マンダレー駅のホームにはいっぱい家族がねころんでいる。
そこに住み着いているみたいだ。
破棄された列車の中を子供たちが走り廻っている。
線路はゴミだらけ。

パゴダ(お寺)では人はゆっくりと寝ている。
ブッダの真下でも寝ている。
弁当を持ってきておいしそうに食べている人もいる。
ガキが立ち小便していた。
ここではパゴダは公園かもしれない。

闇が始まる前、路地のパゴダから
突然、おおきな音でお経がながれだす。
坊さんがロンジー姿(腰巻)で経本を見ながらマイクに向かっていた。
路地には別の時間がながれている。

映画のなかの人々も別の時間のながれに住んでいた。
ピューの寄進祭の公演は笑にあふれている。
すべるコメディアン。
懐かしい笑。
昔、子供の頃見た風景。

でも、世界は急速に動いている。

川端 潤(監督)

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CAST/STAFF

CAST

Pone Nyet Phyu (主人公の女の子)
Ko Aung Myo (父)
Daw Win Tin (母)
Nanda Aung Myo (サインワイン 歌_弟)
Ko Lin
Ko Aung Ko Min (チー/楽器)
—ちょうちょう——————— (キンパの男)
Ko Tnet Naung Win
Ko Pyae Phyo (ドラム)
Ko Myo (フネー/楽器)
Ko Aung Tan Lin (ドラム&タイコ)
Zoy Yor Aung (コメディアンの息子)
Ma Maw (Sisters_スタジオでも会った女)
Ma Htwe Htwe (病院で。。。)
Ma Htet Htet Mwae (無言の人)
Ma Saw Kyu  (太った女性)
Ko Zue Naing (コメディアン 1)
Ko Chit Oo (コメディアン 2)
Ko Zar Yar (コメディアン 3)
Ko Bo Win (サイイワイン_ポーの父)
Ko Kyi Soe (チー_ポー)
Sein Du Won (サインワイン_オーナー)
Ko Sone Nyo (歌 コメディアン)
Ko Tnet Zaw (人でない人)
Ko Myo Than (息子の受賞話した人)
Ko Bo Naing (スィーワー・強い目の人)
Win Sandar Bo (歌 従姉妹_女の子)

STAFF︎









CAST/STAFF

STAFF

監督・音楽・プロデューサー  川端 潤

取材・撮影 Marin Harue

翻訳 井上さゆり 他

字幕 皆川 秀


製作     エアプレーンレーベル /(株)プロジェクトラム
配給・宣伝  エアプレーンレーベル /(株)プロジェクトラム
2018年/日本/カラー/90分/ドキュメンタリー

CAST
























Director

川端 潤プロフィール

東京生まれ
写真家、作曲家、映画プロデューサー

1986年に写真家、エド・ヴァンデル・エルスケンのアシスタント
自身の旅の写真集『ABSOLUTE ELSEWHERE』『NO MATTER WHERE YOU GO』『SO FAR』を出版


映画美術の木村威夫監督作品の音楽とプロデュース
 街      (内海利勝出演)
 馬頭琴夜想曲 (鈴木清順、山口小夜子出演)
 海を見つめて (深緑夏代出演)
 黄金花    (原田芳男、松坂慶子出演)

音楽を担当
 夢のまにまに    (2008年木村威夫監督作品_長門裕之、有馬稲子、宮沢りえ出演)
 名前のない女たち  (佐藤寿保監督作品)
 One Shot One Kill  (藤本幸久監督作品)
 アメリカばんざい  (藤本幸久監督作品)
 笹の墓標      (藤本幸久監督作品)


2015年にはBeauty of Tradition(ミャンマー民族音楽への旅)を監督、公開した。
また、自身のエアプレーンレーベルにてCDを制作・プロデュース(南博、内海利勝、ASA-CHANG,等)
実験音楽のイベントCINEMATIC VOICESをプロデュース。
キャンプと焚き火が好きである。









Comment

マンダレーの空気は弛緩しているけど厳かで、歴史を感じるけどド派手で。
そんな空間を、そのまま全部丸出し。
それこそ主人公が歌い奏でる舞台のように、何もかも丸出し。
魅惑の空気感。

能町みね子(エッセイスト)


父から娘へ受け継がれた音楽、時を経ても歌われる古い歌、楽団員とのアンサンブル。
これはピューという女の子を中心に結ばれた、いくつもの星座の物語だ。
今日も彼女は彼の地で、朗らかに、煌々と輝いているだろう。

村上巨樹(ギタリスト/作曲家)


古都マンダレーには一度だけ足を運んだことがある。
忘れがたい思い出がたくさんあるが、過度な演出や編集を配し、淡々とマンダレーの日常を写し取っていく本作を見ていたら、あの街の空気が鮮明に蘇ってきてたまらなくなってしまった。
なかでもクライマックスを飾るピュー楽団の演奏シーンは圧倒的。
音と色彩が乱反射し、ひとりひとりの命がギラギラと光り輝いている。
ここまで感動的な祝祭映像はなかなかないだろう。

大石始(ライター/エディター)


僕もルーツミュージックを、愛する端くれとして、共通性をかんじました!
脈々と受け継がれでいる、伝統と今が混然としてる、それを人々が楽しんでいる、それは、僕の好きな戦前ブルース(1920-1930年代)に共通するものを感じました!
何処の国でも音楽の原点は、共通するのだと、改めて感じました!
この一座に懐かしささえ感じました!

内海利勝(ロックミュージシャン_キャロル)

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Comment

ラブソングは、世界のかたすみを黄金郷に変える。

ひょんなことから、というのが、川端映画のキーワードだ。 待望のミャンマーシリーズ第二作、21コの太鼓をつなげた宇宙船のような楽器サンワインを持ち帰ったものの、手に入らなかった外側の木枠を求めて、再びミャンマーのマンダレイへ。
メシを食い、酒を飲み、ふらついて、からだに土地の匂いがしみた頃、いつしか異郷の人々の暮らしの中に入り込んでいく。
川端のパートナーMarin Harueのカメラは、あけっぴろげで、明るくて、人懐っこい。
どこへ行っても、みんなが相好を崩して、そばに寄ってくる。
だからこそ、奇跡のように出会ったのだろう、サインワイン楽団の一家と、歌手でもあるピューという女の子に。

紙でこしらえたチープなテントの中、前座のコテコテの漫才がスベリマくるうちに、ちょっと見、アジアの歌姫だったテレサ・テンみたいな少女ピューが登場する。
叶わぬ恋のやるせなさを、手振りをまじえながら、永遠のラブソングを切々と歌い上げる。
始まった演奏は、昇りつめては、ゆるやかに凪いで、いつ果てるともしれない。
これが、生きものの正しいテンポだ。雨のように、水のように、風のように、ゆっくり宇宙の運行につれそって急ごうとしない。

♪これは、ただの空想。これは、夢。
すぐに消えてしまう、ただの夢

ここではないどこか、天がありたっけの色をぶちまけた夕焼けの向こう、それと知らずにパラダイスで暮らす人々の、日々の拈華微笑。
明日のことなど犬に食わせろ、オレはこれから旅に出る。
トロリと甘美だけれど、さすらいのスピリットに貫かれた、したたかで不敵な映画だ。

佐伯 誠(ライター)

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Comment

どひゃー、この映画を見れば,我々ニホン人が同じアジア人として創造したニホン社会が如何に異常かよく分かります。

Chaosという英語は混沌と訳されますが、誤解を生みますね。彼ら西洋人には思いもつかない雑然とした壮絶なるばらばらと統合の中に生を謳歌しているのです。
この事象を言い表す英単語を私は知りません。

多分このミヤンマーの楽器奏者達は、この音階を、この音楽自体をどうして演奏するのかなどと夢にも思わないのではないでしょうか。
自分達の血肉に脈々と流れる自身の世界を表現しているだけなのですから。
少なくともモノマネではない。それが同じアジア人である、少なくとも私のような非白人を何と清々しい気分にさせてくれることか。

仏教の音はナマの歓びであふれている。
父から子に受け継がれるその伝承は、真の意味での教育の一環であると共に、音楽を通し一つの民族の存在意義にまで到達している。
これぞ本当の親子愛、教育に他なるまい。

原始的である事への百%の矜恃と、禅で説く「如意」つまり仏具のみならずその様の様子をただ受け入れること、As it is、がサウンドに横溢としている。

ニホン人は真の意味で彼らの自然な生活から学ぶことが多いと思う。否、学ぶのではない。思い出すのだ。

私を含めたニホン人よ、この映画を見て目を覚ませ。
雑然と混沌の中にピカリ!と輝く美。
どこもかしこもが中途半端にオシャレな東京には、彼らミャンマーの人々が持つ本能と運動神経を凌駕する何があるというのか。

真の自由とは探さずとも自が身のうちにあふれていることを悟らせてくれる、貴重な映像である。

南博(ジャズピアニスト)

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AIRPLANE