ディクソン・ディーに寄す
For Li Chin Sung
香港を中心にして中国大陸を駆けめぐる数少ないノイズ・ミ
ュージシャン/ディクソン・ディーを中心に彼とすでに出会
い、またこれから出会うべき音楽家が集う。
ディクソン・ディーは日本/欧米のアカデミックではない先
鋭音楽家達にとって大陸を垣間見る小さな窓となっているよう
だ。彼がすでに大陸に紹介した音楽家達は、大友良英、灰野敬二、吉田達也、ズビギニュー・カルコフスキー等々、そしてこ
れからも彼は大陸に変形した音楽を送り込むのだろう。
「いったい広州へ行ったらPAシステムなどあるのだろう
か?」といったような愚鈍な無知をよそに、そこには強大な若
いエネルギーが先端の西欧文化に飢えきっていると話に聞く。
日本のノイズ・ミュージシャンが西欧文化の退廃をアジアに
いながら勝手に演じていることの後ろめたさをどこかに感じて
いるに違いないこととは裏腹に、大陸では日本を通じて西欧を見ようとしているようだ。
このような矛盾への危惧が彼の過多なる移動と行動によって
拭い去られることを、そして、ここの孤島群にとって大陸が師
であり元であったことをもう一度思い起こさせて欲しいと願っ
ている。
古舘徹夫 2005年11月3日 |