Gradient
Jun Kawabata
今は2023年9月である。本当は映画が完成されていたかもしれないのだが・・・B級SF映画を作ろうと思っていた。テーマはパンデミックだったのだが、2019年にコロナが出現して世の中が大きく変化し、本当のパンデミックになってしまった。現実がSF映画を超えてしまった。

あまり気が乗らなかったが、この3年の間はゆっくりと曲を作ることに。2000年の頃からの制作したものを聴き直し、もう一度手を入れ直したい曲、未完でほったらかしてあった曲、それに新しく作った曲などを加えまとめた。

結果、3枚のアルバムとなり、このアルバムはその2作目にあたる。全編、基本は「旅」と「失踪」をテーマにしている。

このアルバムの曲名となった「Blind Man(盲目の男)」は1992年頃からごく最近までリスボンの大通りにいた。時折、思い出したように歌いながら、壊れて外れたピッチのピアニカを吹く。よくリスボンのその通りで演奏しているのを見かけた。漂う雰囲気に妙に惹かれて彼の演奏を録音し、それををモチーフにした曲である。

でも、2023年7月にリスボンに行った時は、その男はもういなくなっていて、その場所には違う女の盲目のピアニカ吹きが座っていた。似たような演奏をするのだが、ピアニカのピッチがしっかりしていて、どこかに不気味な怪しさが抜けてしまっていた。

「A Dog of Yangon」は2019年にミャンマーを旅した時、夕暮れの路地に突然聞こえてきた古いスピーカーから流れるお経を慌てて録音したものがモチーフ。歪んだ音が何故か心に響いたのだ。
「Gradient Sky」は『名前のない女たち』という映画のために作った曲を全面手直しした。

「Gradient : A Harf Moon」と「Gradient Tokyo」はそれぞれライブの収録。ピアノとエフェクターによる演奏。

「A Thousand of Sighs」は『Beauty of Tradetion』というドキュメンタリー映画のサウンドトラック。それに少し音を足した。

このアルバムではMoogとArpをいっぱい使った。何ヶ月も電源を入れっぱなしにしといた。30年以上前に手に入れ、半分いかれたシンセとできるだけ仲良くした。壊れていても時代を超えて存在できるアナログシンセは頼もしい。

僕は未来に絶望はしていない。

使用機材
NEUMANN M149
Placid Audio Copperphone
TUBE-TECH MP1A
Neve 1073

Gradient
Jun Kawabata
    01. Gradient
    02. Second Flight
    03. Seep
    04. A Dog of Yangon
    05. Gradient : A Half Moon
    06. Gradient Sky
    07. Springtails
    08. A Thousand Sighs
    09. Blind Man
    10. Gradient Tokyo

Credit
    Michael Kato
    Hideki Ataka (Rhythm Track - 7)

    Jun Kawabata (Piano Moog Arp Synth Voice Percussion)
    All music composed & arranged by Jun Kawabata

    Photograph Jun Kawabata
    Masterling Chihei Hatakeyama
    Desagined by Wataru Yoshioka
    Produced by Jun Kawabata
    Airplane Label Tokyo