Beauty of Traditionは、一種のダイヴィング映画じゃないかと思う。すごく身軽に、それこそダイヴィングマスクとフィンだけで、深海に潜っていって、そこで何かをみつけてしまう、というような。そこにあったのは、巨大なアコヤ貝そっくりのヘンテコな楽器サインワイン!なにしろ、21コもの太鼓をたばねたような構造なんだから。その音というのが、それこそ鯨の歌声のように、とてつもなくのんびりしてる。もちろん、ミリ単位で調整されているけれど、奏でられる音はうねる千の波さながらに、多彩でふっくらと豊かだ。*導入の移動撮影は、ちょっとスコセッジの’’ラスト・ワルツ’’のようで、それだけで引き込まれてしまった。ドキュメンタリーというと、ちょっと肩肘張ったようなところがあるけれど、この映画にあるのは好きなものに近寄って行こうとするナチュラルさだ。むこうが微笑んでいるから、こちらも微笑んでしまう。こちらのやわらかい態度によって、むこうも壁をつくろうとしないで、あけっぴろげになる。そういう交歓が、この映画のチャーム(魅力)で、音楽的にいえばgrooveになっていると思う。*いま、マスコミでやたらにミャンマーを採り上げるけれど、たいていは経済的な切り口で、つまり新しいマーケットとしてのミャンマーが気になって仕方がないということがあからさまだ。それに比べるのもどうかと思うが、手持ちの小さいvideoで、会話するように撮影しているクルーには、そういう「さもしい魂胆」はゼロだ。