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佐藤忠男:映画評論家
日本映画界の長老のひとりである美術監督の木村威夫が、美術監督という職種の枠を越えて、作りたいと思う映画の夢を、臆することなく思う存分に展開した映画である。しかもその夢というのがまことにウイウイしい。 
ザロメの山口さよこは奔放で素敵である。
老いたヨバネを鈴木清順が俳優として演じていて、ザロメの美の妖しい怖さから嬉々として逃げるのがその役割であるが、さあ逃げてどこへ行くのだろう。
どこへ逃げようと見出すべきは美。いくらかのビニールの巻物や照明があって、それを良い感覚と技術で扱えば、変幻自在な幻想を生み出せるし、ルルドの愛の奇蹟さえ顕れ得る。
映画美術という限られた芸術分野で営々と努力を重ねてきた木村威夫が、その限られた場を一気に拡大して出現させたこの不思議な世界は魅惑に充ちていて、とってもかわいい。

 

遠藤ミチロウ:ミュージシャン
人間のおこした神業、それは原爆。人類の生んだ自爆装置。その危うさとやりきれなさを。奇跡は暗黒のなかの極彩色の迷走果てに、目が覚めると起きていた。それは原爆が太陽になっても、奇跡的に生き延びてる今の僕等。

 

林海象:映画監督

85歳を過ぎての監督デビューです。そのタイトルも『馬頭琴夜想曲』。夢の映画です。この映画がどんな夢なのか、その眼で確かめてください。人がみる夢を他の人が覗き見できることは、この映画でしかありません。つまりこの映画そのものが夢なのです。次回作も準備中とのこと。恐ろしい老人のふりをした青年です。木村威夫という人は。

 

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