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音楽について

 馬頭琴夜想曲はほぼ全編に渡り音楽が流れており、ストーリーも音楽と渾然一体となった語りや歌が展開する。ここでは、一般的な映画における音楽の比率以上に音楽が映画の構成に与える影響は大きいと言えるだろう。
 オープニングとエンディングで流れているメインテーマ曲はチェロによる演奏である。これは荘厳なイメージで作曲してほしいという木村威夫の要望を音楽の川端潤が受けたものである。実はこの曲が馬頭琴で演奏され、タイトルが馬頭琴夜想曲になる可能性もあったのだが、そうなると観るものにイメージが固定されてしまう、観客には自由に鑑賞してもらいたいという木村威夫の意向から馬頭琴夜想曲というタイトルの曲は映画中には存在しない事となった。演奏は多井智紀によるものである。
 予告編でも使われている原田光によるボーイソプラノは海外の少年合唱隊をイメージした木村威夫のアイデアであり、そもそも馬頭琴の音色とともにこの映画の発想の出発点の一つでもある。神々しい天からの声というような雰囲気で幻想的なバックトラックが印象的である。初期にはピアノによるシンプルなアレンジであったのだが、映画の雰囲気に合わせるため現在の形になった。この曲は2テイク収められていて、後半のテイクは世羽が木村威夫によるビニール芸術を彷徨っているシーンで使われているため先のものに比べてより幻想感が強調されたバージョンとなっている。曲の後半部分ではMarin Harueによるスキャットがフューチャーされ、その残響音にはリバース(逆回転)のエフェクト処理がなされている。ここではMarin Harueによる天に抜けていくような歌声が聖なる雰囲気を演出する。
 長崎の原爆のシーンは、この映画において最も重要な場面である。約10分間の場面を一気に見せるにあたり、チェロによる通奏低音が土台となっている。その上に自由に様々な奏法で弾いたチョロを編集してベーシックトラックが作成され、そこにバヤラトによる馬頭琴による演奏が足されている。これは草原のチェロといわれる馬頭琴と西洋のチェロの融合、音のタペストリーと言えるだろう。この二つの音色によって構築された世界に、渡邊ゆりひとによるヴォイスや語りが重ねられていった。渡邊ゆりひとはデヴィット・トゥープに認められた独特な歌唱法で知られているヴォーカリストである。この曲には様々なフィールドレコーディングによる素材が使われていて、神父達の歌は川端潤が10数年前にバチカンを旅した時に録音された。又、セミの鳴き声も8月15日に録音された。シーンは別の場所であるが、バヤラトが実際にモンゴルのパオの中で現地のミュージシャンに歌ってもらったものを録音したものも使われている。その他では、実際の撮影現場のスタッフ達のざわめきがザロメのシーンで使われている。
 全体的な音楽の制作はメインテーマ、ボーイソプラノ、ロシアン舞踏の曲といった柱を構築し、その間に柱を作っていき、さらに細かい繋ぎの音を足していったという流れ。ベーシックな構成が出来上がったところで、ゲストミュージシャンの音が足されていった。荒巻茂生は、飛行機のエンジン音の後のフリージャズっぽい雰囲気の曲とザロメのシーンでベースを弾いている。ここでは荒巻茂生のうなっている声もよく聞くと聞こえる。森川誠一郎は武人のお踊りの前後の気合いのかけ声と笑い声で強烈なインパクトを与えている。畠山地平は雪の降っている修道院のシーンでギターとヴィブラフォンによるベーシクトラックを制作。ミックスダウンは川端潤の信頼する安宅秀紀が担当した。

 

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