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日本映画美術界の巨匠木村威夫の第3作目の映画がついに完成。
ルルドの奇蹟の泉や、長崎の原爆をモチーフに極彩色の摩訶幻想世界を現出させた。
メタフォリカルでアヴァンギャルドな映像世界と多様なジャンルの音楽表現は
表現主義者として従来の映画文法を打ち破る衝撃の映像表現は強烈なインパクトを観るものに与える。
木村威夫はこれまでに200本以上の映画にて美術監督を務め、鈴木清順や、熊井啓との仕事で知られる
映画美術の生きる伝説ともいえる存在として知られている。
今作で摩訶幻想空間を浮遊するのは、長年木村武夫とタッグを組んできた映画界のカリスマ鈴木清順と
世界的ファッションモデルで近年は独自のパフォーマンスを展開する山口さよこ。

天地のまるさは輪廻のまるさ。迷いの世界をザロメが繋ぐ
雪の降るある夜、馬頭琴と共に教会に捨てられた赤子は、世羽(ヨハネ)と命名され、
教会で育てられることになった。馬頭琴に見覚えのあった修道院長は、1945年の長崎原爆で間一髪難を逃れた経験を持つ。
そうして月日は流れ、再び現れた馬頭琴。やがて赤子は少年となり、宇宙に思いを馳せるようになる。
生まれつき足の悪かった世羽は、ある晩、高熱にうなされる。爪弾かれた馬頭琴の音色と共に、夢の扉が開かれた。
妖艶な賓(まれびと)ザロメ(山口さよこ)が奏でる馬頭琴は、世羽を時空を超えた世界に誘う。
モンゴルの伝統的な楽器である馬頭琴の独特の音色は、胡弓に比べ力強く、
モンゴロイドの血筋を受け継ぐ日本人の琴線に触れる。人間の歴史は戦争の歴史。
まるで、断ち切れない人間の業のように思える。
しかし、戦いに流れた血を洗い流してきた馬頭琴の調べは、ついに、民族・宗教を越えて愛の奇跡を呼び起こす。

再び蘇る黄金タッグ
これまで『ツィゴイネルワイゼン』『ピストルオペラ』といった数々の名作を世に送り出してきた木村威夫と鈴木清順。
今作では役者としての鈴木清順が登場。
世羽が夢の中で出会ういかがわしい雰囲気と裏に隠された真理を漂わせる不思議な老人、偽予言者ヨバネ。
そのヨバネを追い回すアラブ風の怪しい衣装を身に纏ったザロメには
日本を代表するモデルでファッションクリエイターの山口さよこ。
深遠な東洋の神秘を代表するミューズとして脚光を浴び、
「SAYOKOマネキン」が世界中のショーウィンドウを飾ったこともある山口さよこの蠱惑的なまなざしは、見る者を魅了する。
捨てられた少年役には原田光は荒川少年少女合唱団に所属、無垢な視線が印象に残る。

メランコリックでせつない音楽
音楽は川端潤が担当。川端潤は写真家でもあり90年代に自らのレーベル
『AIRPLANE LABEL(エアプレーンレーベル)』を立ち上げ、
現在までに、自身の作品を含む30枚以上のCDを世に送りだしている。
多彩な顔ぶれのゲストミュージシャンの中には普段はあまり目にする事のないアンダーグラウンドなミュージシャンも参加。
川端潤の指揮の元、各ミュージシャンは個性的な演奏で作品の世界に広がりを与え、
川端潤の作風でもある『旅』をテーマにした切ないメロディ、音色は主人公の少年の心象風景とリンクしている。
挿入歌で滔々と流れている歌声も、合唱団に属している少年役を演じる原田光本人のもの。

 

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